日本経済新聞夕刊のコラム「明日への話題」に女優の浜 美枝さんが書かれた「民芸の美に導かれて」というタイトルのコラムが載っていた。
戦前ダンボール工場を営んでいたが、戦争によって、すべて失ったこと。中学を卒業するとバス会社に就職し、バスの車掌になったこと。そして、浜さんは言う。あの時代と比べようもないほど、今は豊かだ。ものはあふれ、飢える人も少ない。けれど「働けば豊かになれる」という希望が今は見えないと誰もが口を揃える。確かにそうかもしれない。が、ここでまた、私は思ってしまう。では、その豊かさとは何なのか、と。
先日、ホンダの元副社長である藤沢武夫著の「経営に終わりはない」という本を読んだ。その中に次のような一文があった。「人生の3分の2、一日の3分の1、これが仕事をしている比率である。人間に一番たまらない苦痛は何かと聞かれれば、する仕事のないことだと、私は答える。」
豊かさというのは、自分にとってやるべき事があって、それをやれる事。ではないだろうか。義務や責任を果たすことが豊かさに繋がっていくのではないだろうか。
浜さんは言う。「これからの社会に必要なのは、そうした身の丈の豊かさではないだろうか。そんな社会を目指してほしいと、私はひそかに祈っている。」
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